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高森明勅
2024.6.11 07:00皇統問題

皇太子と傍系の皇嗣は具体的にこれだけ違う!

秋篠宮殿下は現在、「皇嗣」でいらっしゃる。
但し同じ皇嗣でも「直系」の皇嗣(皇太子皇太孫·)と
「傍系」の皇嗣では、明確な違いがある。

以下、簡単に列挙しよう。

①皇太子は次の天皇として即位されることが確定したお立場。
これに対して、傍系の皇嗣はその時点で皇位継承順位が
第1位であるお立場に過ぎない。

実際、過去に傍系の皇嗣(秩父宮)が皇太子(上皇陛下)の
ご誕生により、
その地位が変更された実例があり、
理論的·一般的に考えても、
直系の男子がお生まれになれば
当然、これまでの制度のままでも、
その地位は変更される。

現実を見ても、秋篠宮殿下の(天皇陛下より僅か
5歳お若いだけという)
ご年齢からして、
不測の事態でも起こらない限り、

次の天皇として即位されることは想定しにくい。

②皇室典範の規定では、傍系の皇嗣について
「やむを得ない特別の事由があるときは」皇籍離脱の
可能性が
認められているのに対し、皇太子·皇太子孫の
場合は勿論
そのような可能性は一切排除されている
(第11条第2項)。
これは極めて大きな違いだ。

③同じく皇室典範の規定では、「故障」があって他の皇族が
先に摂政に就任した場合、傍系の皇嗣ならそれが解消されても、
他の皇族がそのまま摂政を続けるのに対して、皇太子·皇太孫なら
直ちに摂政に就く(第19条)。
これも見逃せない相違だろう(②③のような重大な
相違がある為に、
特例法ではその点をカバーする必要があり、
以下の規定を加えている。
「皇室典範に定める事項については、皇太子の例による」第5条)。

④傍系の皇嗣のお住まいは一般皇族と同じく「宮邸」。
秋篠宮邸の大規模な増改築工事が行われても、
呼称は元のままだ。

それに対して皇太子のお住まいは「東宮御所」。
天皇のお住まいの“御所”と共通する呼び方がされている。

⑤“外出”の呼び方も、傍系皇嗣は一般皇族という同じく
「お成り」。

皇太子は「行啓」。皇后·皇太子妃なども同じ。

⑥皇宮警察による護衛体制においても、皇太子なら
独立の部署
(平成時代における護衛第2課)が設けられるのに
対して、
傍系の皇嗣の場合はそのような扱いがなされない
(令和の護衛第2課は秋篠宮家だけでなく他の内廷外の
宮家も担当)。

⑦具体的な護衛の在り方も、現状、秋篠宮殿下が
車で移動される場合、
前後に警察車両が1台ずつで
交通規制がない。

これに対して、平成時代における皇太子(今上陛下)の場合は、
前後の警察車両1台ずつに加えて、先導の白バイ2台、後ろにも
側衛車で白バイ2台、交通規制あり、という形だった。

⑧戦後に始まった皇居勤労奉仕において、昭和·平成時代には
私自身もそれぞれ体験しているが、光栄にも皇太子
(昭和時代は上皇陛下、平成時代は天皇陛下)からも
ご会釈を賜る機会に恵まれた。

これは勿論、ボランティアで皇居と赤坂御用地の清掃を行う為に

全国各地から集まった奉仕団のメンバーに対する過分な
ご配慮による非公式な行事であり、その性格に照らして
国民の側からことさら期待すべき事柄でないのは勿論だ。
その点を念の為に確認した上で、事実として紹介すれば、
現状、秋篠宮殿下はそのようなことはなさっていないようだ
(仄聞するところ、コロナ禍で勤労奉仕の実施が
見送られていたのが
再開されて以降かと思われるが、
それまで4日間だった
勤労奉仕が3日間に短縮されており、
秋篠宮邸などがある
赤坂御用地の奉仕団による
清掃自体が行われなくなっている
可能性もある)。

以上のように改めて整理すると、内閣の意思によって
前代未聞の
「立皇嗣の礼」が国事行為として行われ、
その関連行事として
壺切御剣(つぼきりのぎょけん)が
天皇陛下から秋篠宮殿下に
預けられても、
それはあくまでも秋篠宮殿下が傍系の
皇嗣である
事実によるものであって、秋篠宮殿下が次の天皇として

即位されることが確定するもので“ない”ことは、
明らかだろう。


【高森明勅公式サイト】

https://www.a-takamori.com/

高森明勅

昭和32年岡山県生まれ。神道学者、皇室研究者。國學院大學文学部卒。同大学院博士課程単位取得。拓殖大学客員教授、防衛省統合幕僚学校「歴史観・国家観」講座担当、などを歴任。
「皇室典範に関する有識者会議」においてヒアリングに応じる。
現在、日本文化総合研究所代表、神道宗教学会理事、國學院大學講師、靖国神社崇敬奉賛会顧問など。
ミス日本コンテストのファイナリスト達に日本の歴史や文化についてレクチャー。
主な著書。『天皇「生前退位」の真実』(幻冬舎新書)『天皇陛下からわたしたちへのおことば』(双葉社)『謎とき「日本」誕生』(ちくま新書)『はじめて読む「日本の神話」』『天皇と民の大嘗祭』(展転社)など。

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